賀川豊彦の著作
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賀川豊彦、詩集『涙の二等分』、1919年、福永書店
歌人与謝野晶子は、 この詩集に序文を寄せて「賀川さんのみづみづしい生一本な命は最も旺盛にこの詩集に溢れています」「現実に対する不満と、それを改造しようとするヒュマニ テの精神とは、この詩集の随所に溢れていますが、私は其等のものを説教として出さずに芸術として出された賀川さんの素質と教養とを特になつかしく感じま す」などと書いて絶賛したそうだ。(伴 武澄)
歌人与謝野晶子は、 この詩集に序文を寄せて「賀川さんのみづみづしい生一本な命は最も旺盛にこの詩集に溢れています」「現実に対する不満と、それを改造しようとするヒュマニ テの精神とは、この詩集の随所に溢れていますが、私は其等のものを説教として出さずに芸術として出された賀川さんの素質と教養とを特になつかしく感じま す」などと書いて絶賛したそうだ。(伴 武澄)
涙の二等分
おいしが泣いて目が醒めて
お襁褓を更えて乳溶いて
椅子にもたれて涙くる
男に飽いて女になって
お石を拾ふて今夜で三晩夜昼なしに働いて
一時ねるとおいしが起こす
………… 略 …………
え、え、おいしも可哀想じゃが私も可哀想じゃ 力もないに
こんなものを助けなくちゃならぬと教えられた私
私も可哀想じゃね
………… 略 …………
あ?おいしが唖になった
泣かなくなった
眼があかぬ死んだのじゃ
おい、おい、未だ死ぬのは早いぜ
南京虫が──脛噛んだ──あ痒い!
おい、おいし!
おきんか?
自分のためばかりじゃなくて
ちっと私のためにも泣いてくれんか?
泣けない?
よし………
泣かしてやらう!
お石を抱いてキッスして、
顔と顔とを打合せ
私の眼から涙汲み
おいしの眼になすくって………
あれ、おいしも泣いてゐるよ
あれ神様
あれ、おいしも泣いてゐます!
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