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賀川豊彦の著作
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IMG_0156.JPG賀川豊彦『颱風は呼吸する』1937年、第一書房

昭和12年2月20日、東京の第一書房から発行された。昭和12年7月7日に中国事変が勃発したのであるから、その時から5カ月前のことである。表題を見、序文を読めば、当時の日米間の雲行き、満州国建国後の中国の動きが、いかに賀川の心に影響していたかがよくわかる。この書には、アメリカにおける日本人の生活と排日的空気とが克明に病者されており、また植民地氏上海の状況とそこにおける日本人の生活とがかなりよく描かれている。いずれも賀川が生活し、体験し、あるいは見分したものを材料としたであろう。(賀川豊彦全集の解説から転載)

 颱風に備へよ-序文に換ヘて

人間も呼吸すれば、颱風も呼吸する。悪血を浄化するために、人間は呼吸し、地上を浄化する為めに、颱風は呼吸する。

おお颱風は呼吸する! 赤道を北に颱風は呼吸する。烈日は低気圧を作り、熱線は北に動く。然し、熱するものは大気だけではない。人間の血も熱する。寒流は北より流れ、低温は南する。悪逆も血の叛乱する日、天恩は豊かに人類を育み、罪のいや増すところ、恩もいや増す。

日本の上空を通過する低気圧に、東亜は震撼し、大陸の空気は険悪を加へる。

そも、日本を通過する颱風は、何を意味するか? 米の鳥人リンドバアグも日本の北海には、不時着し、仏の空の勇者ジャピーも玄海には、その翼をすぼめた。日本列島にのみ、颱風はそのコースを選ぶ。

颱風過ぎて、更に新しき颱風は起こり、屋根を飛ばし、家を倒し、船舶を沈め、人畜を傷つける。

颱風は呼吸するよ! 颱風は! それは時計の針とは反対に螺旋を画いて北に進む。見よ。「通り魔」は、一進一退、根強く呼吸をつづける。かくして、歴史は繰り返し、叛乱はつづく。

然し、その凡てを貫いて、宇宙意志の標的は変わらない! 罪のいや増す所に、恩もいや増す。発熱する所に治癒は始まり、痛傷のある所に、恢復も約束せられる。されば南風よ、呂宋島を西北西に吹く風よ! おまへの吹く日に、私は雨戸を閉し、門を入れ、屋根瓦を綱で覆い、颱風の呼吸するを待たう! やがて、西は白み、乱雲はとぎれ! 太陽は積雲を裂き、また青空が日本に親しむ日がこよう!

南の測候所の旗は、なんと予報するか?
秒速35メートル、颱風! 中心地、支那海!
私の霊魂よ! 静かに、慌てずに、颱風qお迎へる為めに、準備せよ!
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